2015年11月

 1(日)
時の流れは速い、11月になってしまった。★ご近所さんが回覧板とご実家でつくったヤーコンを届けてくれありがたく頂戴する。仲秋の名月の夜にススキを探していた風流の御仁である。家族で月を愛で豊かな収穫に感謝する、その話を思い出しマタマタこころがほんわか。☆岩手に来てからヤーコンに出逢い、不思議な食感を楽しんでいる。梨のような食感なのでサラダに入っていると果物と感じるけどイモなのさ。★肌寒いこの頃は暖かいものがありがたい。大切な人びとに出逢えた幸運を想う温もり、素敵な音楽が届いた当時を振り返る今日この頃。☆うまく整った音源も心をあたためてくれる。このところ続けているアナログ音源をパソコンで周波数分布を見たり、聴き直している。


 3(火)
晴れた空に明るい秋の陽射しを独占状態で歩いて角を曲がると、部活帰りの中学生二人の笑顔挨拶を頂戴した。その声が幼い声だったので、自分の中学の頃を思い出した。キンキン声の中学生は剣道に盛り上がって毎日大汗をかいていたなあ。それから英語の授業が始まり、習った単語をラジオから流れてくるポップス音楽の歌詞に見つけ狂喜しながら聴いて、うる覚えの歌を口ずさむようになった。キングストントリオの♪トム・ドゥリー♪の『繰り返し』なんかは声変わり前の幼い少年達でも遊びながら歌っていた。同時期にプレスリーの曲も流れていたが、彼の英語は聞きとりにくかったが当てずっぽうで彼の声を真似て歌っていたのを思い出し、ぷ〜っと吹きだしてしまった。声変わり前の少年がプレスリーの物真似なんておかしいぜ。笑った顔で先程の中学生二人の後ろ姿を振り返ると、道端の熟れた柿の実たちが笑いながらオレを見下ろしていた。まるでチビで甲高い声だったオラを知っていたように。


 4(水)
田舎暮らし。様々な自然の音が聞こえてくる。ずっと前にじょにこと歩いた山影を久しぶりに歩いた。暖かい日の光が少なくなった木の葉の間を通り来て気持ちよい。苦手のヘビが出てきそうな処だが、じょにこは気にせずに辺りの匂いを嗅いでいたのを思い出したせいか不思議に怖くない。水音に気付き足を止め耳を澄ます。流れる水の音にはいろんなものがとけ込んでいるように感じる。かなり遠くから引かれた水路も、地下水が沁み出たせせらぎにも、太古からの人びとの想いが反映して詠っているようだ。届かなかった想いさえも。流れの殆どが凍ってしまっても落ちる滴の一つひとつは詠いつづけ、季節をかさね、夕立の後に立ちのぼり虹の光になって、静かに降る雪となって詠い、何かを届けている。


 7(土)
物事をフェアーな眼差しで静かに語る先輩の訃報が届いた。こちらで暮らし始めた頃の東和町議会議員の選挙の際、名前を連呼し通り過ぎる選挙カーばかりで戸惑っていた。当時のカフェほうほうの向かいの歩道にご夫妻で立ち議員活動や今後の抱負を語られていた小川富夫さん。スピーチが終わり拍手したのは私ひとりだった。共産党の議員を表だって支援するのははばかられる田舎の町なんだと実感している私に「ご清聴ありがとう」と握手してくれた。☆隣りの町、宮守のワサビは全国でも有名だが、その農業指導に尽力されていた方だが、ご本人がそれを語ることはなく、江戸時代にあった当地の百姓一揆の模様を伝える古文書の研究や、賢治さんもよく来ていた土沢の市の存続等を熱く語ってくれた。土沢総合支所の庭の賢治さんの詩碑も富夫さんの熱意の表れなのです。さみしくなりますが、心よりご冥福を祈ります。ありがとうございます、お逢いできてよかったです。


 8(日)
冷たい雨に濡れたホウノキの大きな葉が一枚落ちているのを見つけた。裏の林から風に運ばれてきたのだろう。昨夜ミーと二人でお悔みに伺った帰り道の信号を渡っていると、うしろの暗闇からクマゴローさんの声が近づいてきた。遇えた歓びと、県北の彼が何故ここに居るのかという驚きがイッショクタになってウロタエテいると、早口に教えてくれた。先月の『つちざわアート・クラフト展』で会ったがゆっくり話せなかったので、スーパーの入り口で見かけ追いかけてきた。同じような催しで金ヶ崎からの帰りに奥様と花巻駅で落ち合い、奥さんの実家がある宮守へ向かう途中、産直でリンゴを買って、スーパーに寄ろうとして我々を見かけた、と仰る。寄り道しても会えるときは会えるんだねえ、と笑いながらその幸運に恵まれたことに感謝、車で待っている奥さんに大感謝、と手を握り合い別れる。☆産直でクマゴローさん達に買われたリンゴたちが微笑んでいるような気がする。すべての大切な出逢いは、このようなありがたい幸運が重なった結果だなあ、と想いながら帰路につく。


中学に入ってラジオで英語の歌を聴くようになり自然に口ずさんでいた。キングストーン・トリオの♪トム・ドューリー♪に続いてボビー・ダーリン、スティーブ・ローレンス、ニール・セダカ等など。恋の・・・、悲しき・・・が流行っていた頃。女性ではコニー・フランシス。一番のお気に入りは フランキー 。その音源を昨日見つけカセットに録音し波形音源として取り入れた。☆コニーの♪フランキー♪は大ヒットした♪カラーに口紅♪の裏面で、度々ラジオから流れる曲ではなかったが、聴く度にウキウキ、ドキドキするのは彼女の声と歌い方で、語りの後のアーと歌う声にしびれていた。ニール・セダカの作品で、バックコーラスのハーモニーに感激。ピアノ、ウッドベース、ピアノ、トレモロをかけたエレキギター、ドラムによるリズムも大好きで、最後の転調はゾクゾク。冒頭の低音ギターは、後のエレキベース登場につながる。音楽の授業で習った『音楽の三要素(メロディー、ハーモニー、リズム)』を納得しながら聴き入っていた中学生に戻った自分を感じている。


16(月)
久しぶりの晴天、ご近所散策すると軒下に大根を干している。かなりの量を竿から吊るしてある。かなりの重量だろうな?と考えながら先に歩きながら、数日前の会話がよみがえる。週末に一人で泊まりにきていた孫娘が汽笛の音を聞いて曰く「土曜、日曜はSLが走るんだよ」、へえよく知ってるなあ、と相槌をうつと「ジージは知らないの」と『上から目線』。中学一年、クラスのオネーサン格の子に同じような目線で云われたことを想い出す。★ラジオのヒットチャートに登場した失恋ソングが話題になり女の子達が『失恋の悲しさ』を喋っていてオラに『判るか?』と問う、『判んないよ』と応えると『溝渕君、いい本を沢山読みなさいね』と云われた。同じような目線だった。その頃のオラは130pの身長、皆がオラを見降ろしていたのだが、妙に居心地の悪い圧力を感じていると「今度いい本を貸してあげるからね」だと。数日して武者小路実篤を貸してくれた。素直に読んだが、探すべき犯人が登場しない本などナンモ面白くなかったので直ぐ返すと、『どんな感想?』と尋ねるオネーサン。シドロモドロした記憶に来た道を振り返ると軒下の大根が白く鮮やかだった。


18(水)
ここ数日霧がでて霞んでいた山が、今日ははっきり見える。この後はかなり冷え込む天気予報。夏の猛暑も大変だったが、急激な気温の低下もシンドイ。しかし寒さが増して畑の大根は太くなっている。収穫後、茂らせておいたアスパラガスの葉も黄色くなり刈り込みの時期のようだ。刈り込んだ茎葉は焼却した方が良いらしい。病気の元になるそうだ。畑を始める前に苗を植えておいたので株自体が大分疲れているだろうから肥料を施し、寒さ対策の土寄せをしてやろう。★先日東京の友人と便りを交換した。あちらも朝晩の冷えは増しているらしく、互いに元気でいようと励まされた。オラもアスパラガスの越冬の手助けをと強く思っているとシャガレカラスが傍に来て頷いて鳴いている。なかなか可愛いヤツなのだ。


22(日)
明け方前に厳しい冷え込みを感じ、ニュース映像で見た『石割桜の冬支度』の如く肩口に毛布をしっかりと巻き付けた。昨夜0時頃に0℃だったから今朝は氷点下2℃。岩手ネイティブは『否!』と云うがオラ―冬到来だと思うし、半年が冬だと感じてる。今週中に初雪があると云う。☆しかしこの時期の食べ物は美味しい。野菜は甘く味が濃く、林檎に加え柿やらフランスなど果物を楽しめる。陽射しがあるので気温は上がってきたが10℃にとどくか。家の近くに外で暮らしている馴染みのワンコが2匹いて貴重な陽射しを受けて寝そべっている。今朝は寒かったなあ、風邪ひいてないかと声をかけながら歩く。周囲を囲む山には最後の紅葉がみられる。☆誰が何と云おうと『もう冬だ』と思っていたが、コート無しで歩けるのは秋か?耳だってかじかんでないしまだ秋か?・・・などとブツブツつぶやきながら歩く。


25(水)
トム&ジェリースのアルバムを聴くことが多い。2006年からの音源づくりだが、最近は東京から送っていただいたトムジェリの二枚のアルバム音源が手本になっている。何よりアナログの『あったかさ』です。トムジェリ音源を聴く前にはニール・ヤングの『アンプラグド』やコニー・フランシスの♪フランキー♪が自然に聞こえるように再生音量を決めているのです。☆トムジェリの二枚目のアルバムもひのきしんじさんにお世話になり、作詞家の片桐和子さんの言葉の美しさに改めてうっとりしています。アルバム・タイトル『Humanbeing〜人間であること』も、楽曲を季節の移り変わりを表すSE(効果音)でつないでいるのも片桐さんの発案。プチプチというレコード針のノイズさえ気にならずに片桐さんの才能とご一緒できた幸運を感じています。ひのきさんに更に感謝です。★ここ数日最低気温が氷点下になったので『あったかさ』はありがたいのです。片桐さんの画像はネットから拝借しました。


27(金)
今朝方うっすらと雪が降った。その後の雨で消えてしまった。ほんの一瞬舞い降りる雪を見てたらシャガレカラスが一声かけていた。う、何処だと辺りをきょろきょろしたが所在は判らなかったが、風邪ひくぞと案じてくれたようだ。お前こそ寒さに気をつけとくれと声をかける。オイラの畑ではマルチングせずに植えたタマネギの細い葉が頑張っている。ニンニクの芽が出るのは来年か?大根の葉っぱがやけに元気だ。昨日、酒粕と味醂でつくった粕床で漬物にしたら美味しそうだと眺めていたらクシャミ。急いで家に戻り熱いカフェオーレを楽しみながらトムジェリの『Humanbeing〜人間であること』を聴く。


29(日)
一昨夜から吹き荒れた風で落ちてしまった色。枯葉にまじって緑の葉に赤い椿花、何処から飛んできたのだろう。母親の仕事の都合で遊びに来ていた孫娘が『暇だ暇だ』を連発するので一緒に外を歩く。夜の間に降った雨が水溜りになっている道でオラが気が付かずに水のなかを歩くと「わあ、ジージ水のなかだよ」と嬉しそうにする。早く教えろと頼むが、又水溜りを歩いている。何がおかしいのだか爆笑している。遊具のある公園に行き、最近挑戦している『逆上がり』のために、手袋をはずし高い処の鉄の輪にぶら下がり腕の筋肉を鍛えたいと張り切るが、冷た過ぎて断念。何と上着を脱いで再挑戦しようとした時に強風で数メートル飛ばされた。転んでしまうとドキッとしたが、運よくベンチ型の遊具にちょこんと腰掛けるかたちになった。安堵のあまり二人で大笑い。目を丸くして空中を飛ばされたと大げさに云う。大冒険だったようだ。ホントに飛ばされない内に帰ろうと声をかけると「ああお腹すいたぁ」だと。さっき朝ごはんを食べたばかりなのに。帰り道には飛ばされた木の葉が水に浮いている。午後、障害者支援施設の十周年の式典に孫娘を連れてゆくとオラの膝の上でうとうとし始めた。空中を飛んだ冒険で思いのほか疲れたようだ。やがて母親が迎えにきて帰っていった。きっと今夜は空高く飛ぶ冒険の旅に出ることだろう。


30(月)
ミゾ、オレがギターを弾こうとジミーさんが仰る。かまやつひろしさんの♪どうにかなるさ♪。当時流行っていた日本の楽曲をトム&ジェリースのサウンドで構築し確認すべくスタジオ録音の現場。遊びに来ていたジミー時田氏がスタジオに入る。正に『ジミー時田とマウンテンプレーボーイズ』だ。最高の音楽集団に支えられて歌う立場だが、慣れていない所謂ウエスタン音楽、どのように歌うのか皆目判らない。トムジェリ参加を躊躇した理由でもある。何回も誘いに来てくれたリーダーの谷岡さん、ギターの遠山さんは『ミゾの感じるまま歌えばいいのだ』と仰ってくれ参加に踏み切った。☆トムジェリは歌も同時録音が当たり前でテイクも余り重ねない『一発録り』。その音源を昨日から聴いている。何カ所の高音を『ひっくり返す』歌い方をしていて聴く度に照れてしまうのだが、ラジオで幼い頃に聞いたウエスタン音楽を意識していたのだろう。ジミーさんが加わったクラシカルなカントリーサウンド、ドラムスの田中さん、ベースの辻田さん、無駄な音が一切ない。コーダの谷岡さんのブルースハープ、ファズをかけた遠山さんのギターにはコーラスしたかったがソロのままブルースを強調して歌った。☆数年前、東京の友人の送ってくれた、長年大事に聴いてくれたカセットテープ音源に当時やりたかったコーラスを加えた音源にした。それ以降編集を加えながらジミーさんが加わったトムジェリの音楽に少年のように感動しているのです。