2015年 5月

 1(金)
長い冬のあいだ雪に埋もれていたウルイを頂戴するのは二回目。キッチンバサミで根もとから切ると、切り口から水がほとばしる。食いしん坊は切りながら一本を口にし、やさしい苦みとトロッとした風味を味わい、このおとなしくてやさしさに感動。茹でるのもよいが生もお勧めだ。☆雪に押しつぶされるようだったけど、雪をあたたかい布団のようにして春を待っていたんだなあ。ウルイのホノカナ苦味に気付いたのは今年で、去年まではペロッと食べちまって失礼してた。新しい発見で更に好物となる。★音楽では、フォルテではなくピアニッシモで届くものがある。ヴァイオリンの高音より中音のヴィオラに伝えたい想いを託すこともある。☆パソコンでのデジタル音源制作も、始めの頃は全ての音を際立たせることに専念してたが、必要以上の『くっきり感』は耳についてしまう。


 2(土)
部屋のなかで28℃。鳥が愉快だとしきりに歌っている。外に出ると思いの外爽やかな風。何処かの花のイイ香りをはこんでいる。秋に刈り込まれた野バラとスイカズラが勢いよく葉をしげらせてる。この二人も、もうじき香る花を咲かせるだろう。☆連日の草むしりでシャガンデいるので昨夜も足がツリそうになった。冬の間、ほんの申し訳程度のスクワットの効果を感じながら作業するが、そんなに長い時間は無理ってもんだ。☆音源づくり、エンディングで演奏速度を変化させている。ひとりの演奏を多重録音するのだがナカナカ難しい。オレは最初にギターを弾きながら歌う。それを聴きながら新たな楽器を加えるだが、リットしたりアテンポしたり、微妙なズレをつくったり。強弱の変化も。そんな演奏の合間にスクワットしながら確認。まだ草はあるし、後からあとから生えてくる。でも腰がイテーよお。


 5(火)
昨日は『つちざわアートクラフトフェア』に出店しているクマゴローさんに会いに行く途中、ご近所わんこのフジ(25日の画像)が見事に咲いているのを見つけカメラに収める。左の奥に真っ黒わんこが暮らしているので会う度に声をかけているが、もう直に咲くなあ、と期待していたが、こんなに早く咲くとは『クリビツテンギョー』、”びっくり仰天”の最上級をオレがいた業界ではこう云うんだ。☆車の通行を止めた土沢の商店街は大賑わい。まず酒屋のわんこに声をかける、随分太ったなあ。店の中にK君、Tちゃんも。伺っているクマゴローさんの出店場所に向かうと、次々声をかけられ暫し立ち話。まなび学園の講座でご一緒した方は一際大きな声、焼き物を出展。しばらく前に薄暮の道を歩いていているオレを気遣って車で家まで送ってくれた、忙しくワッフルを焼いているアンソニー。☆やっとクマゴローさんに辿りつき大いに話が盛り上がる。三時間の散策を終え家路につくと、ななんと裏の林にも山フジが咲いているではないか!“クリビツテンギョー”。


  6(水)
秋に収穫したつもりだったが、一本残っていたクレツボカブは花盛りの黄色、隣りで大根も同じように薹立ちして可愛い白い花を静かに咲かせている。パソコンの大きな画面で確認すると、花びらの白地に青紫が加わって静かだが艶やかな風情。肉眼ではボンヤリ色だったが拡大して見られるっちゅうのはイイ。バックを黒の紙にしたのでクッキリと確認できた。有難い。☆少し早めに植えたニンニクも順調にしている。八重桜が咲いたから、野菜の苗はそろそろ出回るだろう、ジャガイモは既にメイクイーンとダンシャクの種イモが待機している。畑も4年目、連作障害が出ぬように気を付けよう。☆裏の林でウグイスが正統のうたを歌っている。駅のホームで聞いたその後『ホーポテチ』ウグイス、何処か他に行ったのかご無沙汰だ。★11年3月のブログを整理して、仲良くしている山羊の誕生直後の画像を発見、鼻がピンクでなんとも愛らしい表情。裏の林の天辺で幼いトンビが甘えた声でなにか訴えてる。


 9(土)
大根の花は白色だけだと思っていたが拡大すると白い花びらを彩る幾つかの色があったし、中央には白ではない花粉。ぼんやりと見えていたものを確認できるって有難い。☆この数日、そよ吹く風に微かな花の香りを感じていた。産直の店先で出来たてホヤホヤ野菜の苗を見ていて、その香りが濃く漂っているではないか。それは鉢に仕立てた木に白い花で背丈はオレ位。ニセアカシア。赤花はじょにこも歩いていたリュックさんの庭で見ていたが、大きな木なので花を間近で見るのは初めて。当然ケータイを尻のポケットから出して収める。★音源編集で、手をかけ過ぎたファイルをシェイプアップしていた。調子にのって過度の色付けをほどこしてしまい不自然の塊りを削っている。二日かけて、修復は無理と思えたが、やっと程良いかなと思える状態に。


11(月)
今朝はきのうとうって変わり暖かい。昨日の通り雨が届けた結果は土の表面には無いが、沁み込んだ水分が陽射しを受けて田園の空気をしっとり暖かくしている。さっきから、聞き慣れぬピィーピィーと甲高く鳴く鳥の声。幼い鳥が“お願いだから・・・”と甘えているようだ。オレの口が古い詩をつぶやく。☆西洋の古謡には♪春の早朝、川の畔で歌う美しい女子に遭うた その詩は・・・♪で始まり、ながくつづく歌が少なくない。甘い花の香りが漂う田園風景が、そんな語り継がれた詩を一緒にうたおう、とやさしく、あたたかくうったえている。薹立ちの先の花たちは役目を終え静かに散っている。畑の傍を流れる水たちは、生き物の太古から繰り返す様をやわらかく詠っている。早起きびとの農作業後の焚火のけむりが広がってくる。臭かったイイ匂い、モトイ  『草刈ったイイ匂い』が広がる。イイ匂いだ。


13(水)
激しい地震がありました、花巻では震度5強でしたが皆、無事です。
☆長くガタガタと揺れた。オーディオのスピーカをパソコンの傍に文庫本を敷いて置いてあるので、飛び起きて押さえた。幸い棚からものが落ちることも無く、部屋を出ると大震災の時に移動していた冷蔵庫も位置を変えずあった。ご近所の先輩に声をかけに行く、元気にオシャベリが始まり安心。☆昨日田植えを終えたばかりの田んぼでは、小さな稲の苗がそよそよと風に揺れている。7時の全国ニュースで上空から中継していたヘリが飛んでいるが、平常の長閑な景色。ついでに畑のニンニクやアスパラガス、桃に声をかけて回る。家に入り、アンプの状況を確認。無事に音声が流れる。☆早起きしたので眠いが、腹も空いた。
★ニュースで花巻が一番揺れたと伝わり、お見舞いを頂戴しました。こころより御礼申し上げます。報道されたより長く揺れましたが、まったく被害はございませんでした。今日は時々雨降りで、合間をみて草取りしましたが眠気がとれません。ありがとうございます。


15(金)
少し蒸し暑く感じる。野菜の苗が売り出されると聞きスーパーに向かっていると、手前の公園の隅のドウダンツツジの白色が声をかけてきた。近づき目を凝らす。ちっちゃな壺のような花の形が可愛らしい。スズランの様に思うのだがツツジなのかい、と問いかけながらカメラに収める。これから野菜の苗を買いに行くところさ、逢えてよかったよ。☆店先の駐車場の一画に並ぶ元気な苗たちが菜園の夢をふくらませてくれる。段ボールの箱も用意され、今年もナス、キューリ、トマト、ピーマンを選び、箱を抱えて家路に。途中の温度表示では21℃、蒸しているので暑い。喉が渇き珈琲を飲みながら膨張した音源のシェイプアップを続け、涼しくなったら植えつけようと、再生音量を決めるために♪Comes a Time♪を聞こうとしたが何故かKate Wolfが聴きたくなり、彼女の ♪The Rising of the Moon♪ をyoutubeで探す。Kate Wolfの楽曲はAnthonyと一緒に聴いて以来、癒されている。先程遭ったドウダンツツジの色がやさしい月の光になって、まだ語りかけているようだ。☆音源編集で耳が疲れたので畑に出る。連作障害にならない処へ野菜苗を植え付けた。肥料は無し。植え付け直後、結構激しい夕立のような雨が降り出した。


16(土)
昨夜の雨は激しかった。植えた野菜の苗に水を遣った直後から断続し夜半には物凄い音をたてていた。☆雨になりそうだから花や野菜に水を遣らずにいると降らないし、反対に水を遣ると雨が降る、ということを土地の言葉で熱く語る先輩、年に何回か繰り返してくれる。正に昨日は言葉通りだった。☆今朝、大雨で何本かの苗が傾むき、チョイと指先で垂直に収まるように土を押しながら『心配したけどストレスにはならず元気そうだな、安心したよ、今年も宜しく頼むぜ』と声をかける。☆鳥たちは風雨に怯えただろう。裏の林のテッペンで幼いトンビの声がするのを待つ。午後になってカラスにまじって声が届き、頑張ったなあとエールをおくる。★編集中の音源は数年前に完成したと決めつけマルチトラックを削除、2ミックスになったもののシェイプアップは困難の連続。田舎に暮らす生命たちから、大きな応援を貰って続行中。


17(日)
今のところ元気なキューリの苗、緑が綺麗。☆膨張した音源のシェイプアップ作業、自然な音に戻せたらと続け、疲れると外に出て田園に棲む生命の活動に癒されている。そして時折プロが仕上げた音源を参考にしている。上に挙げた『最近聴いている楽曲』関連でニール・ヤングの楽曲に広がったりしている。☆彼の音楽は70年頃から身近に感じている。今日はHarvest Moonが聴きたくなり編集プログラムに取り込んであるアルバムからコピーした波形音源を再生。最近のライブで演奏しているかな?とネット検索する。youtubeにあった。 2005年 の音源だが懐かしいイントロが流れる。オリジナルの高いキーまま歌っている。始めは苦しそうだが2コーラスからは殆ど昔の調子を取り戻している。プロモーションビデオの箒の映像が絡む。他の音源を捜すと アルバムリリース当時のライブ演奏 を見つけ聴く。やっぱりイイ。このアルバムはイイ。畑の世話をしながら編集を続けられるだろう。有難い。裏の林で鳥の声が聞こえている。


20(水)
音声波形編集プログラムで見る編集中の音源の音声波形。横軸が、左から右へ時間の経過、縦軸が音量の変化を表している。この波形が表す音、オレの場合はひとりで演奏した音を録音し、その音を聴きながら演奏を重ねている。波形が大きく振幅している処は、楽器(声)の振動が空気を大きく動かしている。反対に小さい波形は空気の振動の小ささを表している。☆『時間の経過と音量変化を表す波形には演奏された楽器(声)の音色も含まれていて』、オレの編集作業は、この音色を整え自然に近い音に仕上げること。☆この波形は二段に構成され、上段が左のスピーカ、下段は右のスピーカから出る、それぞれの音の波形で、すでに重ねて演奏した音で構成されてます(2Mix)。☆音量には越えると歪んでしまう限界点があり、『過度な音色の色付けも歪みの原因』となります。 オレのような素人が音声をイジクッテ音楽にしようとダイソレタことをできるのも、デジタルによる音声編集プログラムとパソコンのオカゲなんです。お調子モンは過度な色付けによる歪みをナントカ減らし、目指していた音楽に戻し、皆さまに聴いていただけたら、と試行錯誤を繰り返しているのです。そして疲れた頭と耳を田舎の生命たちに癒して貰ってるんです。風に乗って小学校の子供らの運動会の練習の歓声が聞こえています。


21(木)
音源編集の空回り状態に疲れて外を見ると雨はあがったようだ。近所を散策、温泉の隣りの庭から甘い香りが届いてきた。ニセアカシアの花の香りのようだ。東京を離れて一年目には地元の方に『すっかり東和町の人になったねえ』と云われたオレだが、口にしたニセアカシアという命名に東京弁で、真贋?更に使い慣れてた下町言葉で、ニセもホンモノもネーよなあ、とベランメー口調で異議を呟きながら歩く。ヒョーズンゴっちゅうのはケンカするにはモッテコイだぜ、だから憲法九条が必要なんだ、と訳の判んない方向へ口が動く。☆先日白花に遭ったが此処には赤花がある。中に入ると様々な緑たちが元気にしている。今年は会う機会を逸してしまった赤色花のフジに挨拶しロックガーデンの方向に進む。在った、あった、花の盛りは過ぎているが木全体に花がいっぱいだ。丁度オレの顔近くの枝に鼻を近づけ深呼吸。少し薄まっているがモノホン(業界言葉で本物の意)のイイ香り。☆先日盛岡の中の橋で見かけた赤花のトチノキ、白もイイが赤もイイ。


25(月)
足腰が弱くなっちまって慌てて動くと思わぬことがおきる。午後関東で地震があったと聞き、ふと心配になり仲間にメールでお見舞うと、すぐに無事の知らせ。オレほど弱っちゃいないってことかもしれぬ、失礼した。☆もうすぐ梅雨になったらアジサイの花の季節というのに、去年咲いた山アジサイの花がドライフラワーになったまま枝に付いている。バッハのアリアのメロディを歌うオレ。☆人々が口ずさめるような旋律的な音楽を『air』と呼んでいた。ダニーボーイで知られる『ロンドンリー エアー』や『G線上のアリア』、アリアはイタリア語のair。ドイツ語ではエール。それらは空気や外気を表す言葉、何時しか音楽をも表すようになったのは何故だろうか、と随分昔から思っている。☆オレたちの世代は中学から英語の授業が始まり、大まかな英語辞書も教科書に附いてきてた。好きな英語の先生の授業に出てくる単語を当時から聴きだした英語の歌のなかに見つけるのが楽しかったのもあって、暇な時に英語辞書を読みだした。一つの単語から派生語へと、妙に興味が広がってた。今では細かい辞書の活字が読みにくいのでネットの辞書で調べている。レパートリーの楽曲の英単語を再確認したついでに派生する単語へと『サーフィン』してる。


27(水)
畑に植えた野菜の苗に、そろそろ肥料を施すかと思っていると、突然電信柱の上からギャ〜と声をかけられ、見あげ『元気にしてるかい』と、こちらも声をかける。相変わらず真っ黒でオレには他のカラスと見分けがつかぬが、声の表情で馴染みの芸者ならぬ、カラスだ。今年も土をいじくる季節なので『暇な時に畑を見回ってくれよ』と頼んでおく。オレの声かけに返事はないが『頼むよ』と云っておく。空は暗い雲だらけ、遠くの山には白い雲がかかって、いつ雨が降ってもおかしくない天気。鳥たちには風雨がストレスになるので『濡れて風邪引くなよ』と云うと、ひと声ギャ〜。☆工房で編集をしていると、シトシトと雨になっている。梅雨入りは近いのか。遠くで普通の声のカラスがカ〜カ〜を連呼して家路に急いでいるようが。


28(木)
音源編集に疲れ外に出る。風が吹いている。裏の林の木々の枝が揺れ、葉がこすれ、ざわざわ、さらさら騒いでいる。幾つかの鳥の声にまじって、高い処で幼いトンビがピッピ〜と繰り返している。録音した各楽器に施した過度な『色付け』部分を削って、自然な音色に戻す作業をつづけていたオレの耳は、今聞こえる風がもたらす音の周波数を聴き取ろうとしている。『おい、止めろ』とオレの声が押しとどめる。この声は高く聞こえるが中低域が多い。☆畑の一画に大根の花が盛りだ。とても愛らしく咲いている。耳の疲れをなくすためにご近所を散策すると、田んぼの畦にマーガレットが咲いている。田植え後の畦はきれいに刈られているがマーガレットの群れは残されている。除虫菊とも呼ばれているんだって?風にそよぐ花たちは微笑んでいる。☆田んぼに沿って歩くと山羊の二人がオレを見ている。親たちより無口な二人に近づくと柵越しにオレのラガーシャツをかじりにくる。『ケータイで撮った写真を取り込んでいるSDカードをパソコンにつなぐと、二人の誕生直後の写真がモニタに映るんだぜ、二人ともちっちゃくて鼻がピンクっぽかったよ』二人の角のあいだを撫でると喉の奥で何か云っている。その声を聴き、オレの耳は、『コモッテいるなあ、EQで高域を上げたい』とつぶやく。耳の疲れはまだ回復してない、もう少し歩くか。