ほうほうの 9.11

06年の9月11日は僧侶の妻であり、ほうほう・みえこの母、義母の四十九日だった。
義母が亡くなる一週間前に、東京から一緒に来て、私をアチコチにガイドしてくれたワンコ
『じょにこ』が18年の命を生ききった。
じょにこの役割は『先にいってアチラの準備しているから・・・」と続くように感じた。

田舎のユッタリした環境で出会えた数多くの外国の方々との交流は多くのものを届けてくれ、それらは更にユックリと時間をかけ私の心にしみ込んでくるようだ。

岩手の暮らしの中で感じ始めていた『生命のつながりと個々の限りある生命』、義母と『じょにこ』の残してくれたものは、29歳、31歳の時に相次いで亡くした父、母への想いに繋がり、
2001年の9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の犠牲になった人々や災害、事故等で不慮の死をとげた方々へ心が動くのを感じていた。

その頃、東京の友人が『PA機材を活動に役立てろ』とYAMAHA STAGEPAS送ってくれ試す機会をうかがっていて、その機会がやってきた訳だった。
四十九日の法要の後、店の駐車場から道路に向かい機材をセッティングし、
説明もせずに二時間追悼、鎮魂の音楽を演奏した。日本現代詩歌文学館での村上成夫さんとのコンサートで世話になった北上のMさんが偶然、来てくれて道をはさんだベンチで聴いてくれた。

感謝、追慕、鎮魂、追悼・・・言葉にすると、口幅ったいことも・・・
音楽をしている時こそ、素直に自分らしく居られるので、極自然に想いを音楽に託せた。
音楽を続けてきたことの意味の様なものも、ウッスラと判りかけていた。
その判りかけたことは、音楽でしか伝えられないのだろうか?


05年にカンサスの『Dust in the Wind』が、
06年の年頭にサム・クックの『A Change’s Gonna Come』が遥か彼方から届いて来た。
それは『ほうほう』オープンの頃にカセット・テープ5、6本にダビングしたものを車の中で聞いていた。
二十年、四十年前の楽曲、当時意識して聴いた記憶がないのに。

大学受験準備期間で’S.クックの亡くなった64年の作品なのだが『S.クックが射殺された』という報道に驚き、楽曲の印象が薄れたのだろうか?中学入学以降、意識してラジオから流れる輸入音楽を聴き始め、彼の歌う『Send Me Your Lovin’』が好きだったが、中学生のマイ・フェヴァリット上位のP.アンカ、N.セダカ、B.ダーリン、J.プレストンと比べるとランクは低かった。
音楽業界の経験を含む私の音楽活動を経て、ザ・バンドのカヴァーが無ければ、サム・クックの『A Change’s Gonna Come』の私への到着は、更に遅れただろう。
『Dust in the Wind』はコンサート・ツアーで全国、アチコチ移動していた’79年だったと思う。仕事以外の音楽を聴く余裕がない頃で信州で蕎麦を喰っている時に耳に入って来て、何故か強烈な『懐かしさ』を憶えた記憶があった。

『何故、こんなに時を隔てて届いてくるのだろう?』という想いを強くしながら時々演奏していた。岩手で暮らし始めた頃、僧侶である義兄から『般若心経』を読むように勧められ、東京から移した仏壇に向かい唱えていたので『Dust in the Wind』は心に落ち着いた。

亡くなる直前のサム・クックの声が聴きたくてネット検索していて、B.ディランも同時期に『A Change’s Gonna Come』歌い始めていると知る。それも二人共、超ヘンテコなキーで。

S・クックの33歳の人生を彼の音楽活動を通じて感じるに『A Change’s Gonna Come』は大きなものを届けてくれる。
生前に語っていたディランの『Blowin’ in the Wind』への意識の反映だけに留まらず『改革を望む者自身の自己改革』を唱っている。

亡くなる数週間前に「お世話になったお友だちを招いて、お寺でお食事会をしたいの。その時和雄さんのライブ音楽を聴いてもらいたいの」と義母が言い出した。
義母の実家の直ぐ近くの花巻・上町の宵宮での出張ライブが決まった頃だった。

毎日母の傍に付いていた“みえこ”も病院から十分程度歩き宵宮での演奏を聴きに来た。雨が降っていたが、意外に人出があり、PAオペレーターにも恵まれ、気持ち良い音楽が流れた。
義母にとって幼い頃の思い出の“上町の宵宮”で私が演奏するという“ご縁”を感じながらの一時でした。病院に戻って「イイ演奏をしてきました」と報告すると、とても嬉しそうに「良かったねぇ」を何回も繰り返していました。
そして宵宮の翌日、義母は亡くなった。





不思議なことに、この9.11が、きっかけになって、古の想いが届いてきているように感じるのです            ( 1/26 09)






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