M. 6 ほうほうの子守唄

リマスター版ではM6に移った。
思えば『寝るんじゃない!』という子守唄は世界でも珍しいのだろう。
店に訪れる外国の方々は「oh,it’s my favorite!」と好んでくれている。

私にとって合歓の木の花のイメージは眠り、そのもの。
大きな月の明かり、荷馬車の揺らぎ、とそっと見守る自然を象徴するふくろうの声で、状況を構築、原型はすぐに生まれた。

 合歓の木ばやしを通り過ぎ
 荷馬車に乗った ふたり
 何処までも つづく道
 暗闇を ぬけて・・・

その数年前の24歳の夏、フォーク・ミュージックの巨匠マルビナ・レイノルズおばあちゃんに逢った。「日本公演では日本製ギターを使いたい」というので、主催者からギター選びを頼まれた。
東京の主だった楽器屋を歩き御茶ノ水の楽器屋で、おばあちゃんの気に入ったギターを見つけた。この丸一日、移動の車の中や歩きながら、いろんな話をした。
おばあちゃんが創った曲の中の大好きな曲を各楽器屋さんで、私が選んだギターで歌ってみて、最後はおばあちゃんが手にとって弾いて判断するが中々、気に入ったギターに出会えない。
この一日でMorning Town Ride(邦題=朝の街に日は昇る?だったかな・・・)を何回も歌った。おばあちゃんの作品でイギリスのThe Seekersが世界的な大ヒットさせた楽曲で、いまだに大好きな子守唄。
マルビナ・レイノルズの数多くの作品は世界中のソングライター達やアーティストに大きな影響を与え続けているが・・・
もし、おばあちゃんに直接、逢えなかったら、
ほうほうの子守唄は誕生しなかったし、
私の音楽も人生も別なものになっていた、と思う。
宿舎の赤坂のホテルに戻り、マルビナおばあちゃん、娘のナンシーとサンドイッチでお茶をしながら、大好きなおばあちゃんの楽曲を、知っている限り歌い続け、途中からは、おばあちゃんもナンシーも一緒に歌い始め、創作当時の思い出などを話してくれたのです。
Morning Town RideTurn Aroundなど、ナンシーのために書かれた楽曲を三人で歌っていると、バッグから何やら取り出し私に手渡す。
マルビナおばあちゃんが主宰しているサンフランシスコ フォークソングクラブの会員証に直筆のサインをし入会の許可をいただく。
そしてナンシーを横目でみながら、チッチャナ子供にとっての眠りとは、どの様なモノなのかを優しく語ってくれた。

数年後、娘の誕生と同時に、このリフレイン パートが生まれたのです。

  山の端には 大きな月
  ふたりの心を照らす
  荷馬車は揺れる ごとごと
  ふくろうが ほうほう

当時はベースを弾いていたので、コード進行とベース音の展開はベーシストの勉強が実ったのかも知れない。
やはり、今回のCDづくりで、随分と昔に創った楽曲に、現時点での出会いを感じます。
楽曲たちも、独立して、生き続けていますね。
何十年の間、それらの楽曲に眼差しを向け、その時点の私自体が、表現、演奏しているのですね。

外国の方々が、この歌を好んで聴いてくれるので、驚いています。
「どのような内容か?」という問いに、拙い英語で説明しながら歌ったら好評でした。
「荷馬車の移動に象徴した二人の人生を見守る自然界の優しい眼差しを『月とふくろう』で表現してるのです」「フクロウの鳴き声 ホー ホーは会話での納得の意味も在る、well, well や I see,とか Yes,indeed! という意と同じサウンドなのです」などと説明しています。
このCDではソロで歌っていますが、ほうほうエンジェルバンドのコーラス・バージョンも気に入っていますので、いずれCDで聞いてもらえると思います。ボーカルをダビング時に、「二人の心を照らす」のフレーズを変えてみたのです。8分音符だけのフレーズを本来の言葉の長短どうりに16分音符を加えた。

♪ ふたりの こころを てら

ほうほうエンジェルバンドで歌う時も変更したので、サビの4声コーラスも16分音符に。
歌うフレージングを考える時は、私が話をする時の各音の長さが基準にし、強調するには如何に変化するかをチェックしています。
岩手音楽仲間、良き先輩、村上成夫さんは、『ほうほうの子守唄』を聴き、すぐに歌い広めてくれてます。
リマスター版を重ね、ハーモニーヴォーカルを加えました。

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